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- ピッキング防止法とは?逮捕の条件や持ってはいけない工具について解説
ピッキング防止法について
「特殊開錠用具所持禁止法(ピッキング防止法)」という法律をご存じでしょうか?
中々聞くことない法律で、内容も分からないという方は多くいらっしゃると思います。
今回はピッキング防止法について解説したいと思います。このコラムを読んで知識を深めてもらえれば幸いです。
ピッキング防止法とは
特殊開錠用具所持禁止法(ピッキング防止法)とは、2003年6月に制定された侵入犯罪を未然に防ぐための法律です。
内容は、特殊開錠具用具の所持・指定侵入工具の隠匿携帯を禁止したものになっています。
簡単に言うと、「空き巣を行うための特殊な用具や一般的な工具を持つことを禁止」する内容です。
罰則の内容は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
ピッキング防止法に当てはまる条件
ピッキング防止法で検挙される条件は大きく分けて3つあります。
- ・特殊開錠具用具の所持
・指定侵入工具の隠匿携帯
・特殊開錠用具の販売・授与の禁止
特殊開錠具用具の所持
業務やその他正当な理由がない状態で、特殊開錠用具を所持していると検挙されます。
所持なので、そもそも持つこと自体が違法です。特殊開錠用具が何なのかは後ほど説明します。
指定侵入工具の隠匿携帯
業務やその他正当な理由がない状態で、指定侵入工具を隠し持っていると検挙されます。
「隠し持っている」なので、カバンやポケットに入れて持ち歩くと違法です。指定侵入工具が何なのかは後ほど説明します。
特殊開錠用具の販売・授与の禁止
業務やその他正当な理由がない人に、その事情を知っておきながら、特殊開錠用具の販売・授与を行った場合、検挙されます。
一般の人に特殊開錠用具を売るのは違法ということです。
ピッキング防止法が制定された背景
1999年からピッキングによる窃盗被害が増えてきました。2000年には全国で29,211件の犯行を認知しています。
このころは各地で窃盗団が跳梁跋扈し、数多くの犯行に及びました。
2001年、2002年ともに19,000件以上の犯行が行われています。メーカーはピッキングに強い鍵への交換を呼びかけ、2003年には9,351件まで減少しました。
ピッキングによる被害を未然に防ぐために、特殊開錠用具や指定侵入工具を持つ人を逮捕しやすくするピッキング防止法が制定されました。
ピッキング防止法と鍵交換のおかげで、2005年には1,000件台まで被害を減らすことに成功し、現在でもピッキングによる被害を減少させています。
ピッキング防止法の適用となる道具とは
「特殊開錠用具」「指定侵入工具」と言われても、どのようなものか分かりませんよね。
具体的のどのようなものを持っていると検挙されてしまうのか解説します。
特殊開錠用具
特殊開錠用具は
- ・ピッキング用具
・破壊用シリンダー回し
・ホールソーのシリンダー用の軸
・サムターン回し
の4つです。
これらに該当しなくても、法令に定める機能や要件を満たすものは特殊開錠用具となります。
ピッキング用具
シリンダーに鍵を使わず、鍵を壊さずに開けるための用具です。先端の尖ったピックや鍵に引っかけるためのテンションが該当します。
シリンダーのピンを揃えて、鍵があるような状態を作って開錠するために使われる道具です。
破壊用シリンダー回し
シリンダーに差し込んで回すことで、鍵を破壊して開錠するための道具です。
先端がシリンダーに適合した形をしており、特定の鍵を破壊するのに強い威力を発揮します。
ホールソーのシリンダー用の軸
ホールソーという丸い穴を開ける道具に取り付けて、鍵を破壊するための道具です。
シリンダーに適合した軸を使うことで、シリンダーをきれいに破壊することができます。
これを使って、シリンダーのキャップ部分を破壊し、中身抜き取って鍵を開けるという犯行が可能です。
ホールソー自体の所持は法律には触れません。
サムターン回し
ドアの隙間や開けた穴からサムターン(室内側のつまみ)を回して開錠するための道具です。
サムターンを回しやすいように、様々な形に加工されています。
市販されているものでも、自ら作ったものでもピッキング防止法の検挙対象です。
指定侵入工具
指定侵入工具に当てはまるものは
- ・マイナスドライバー
・バール
・ドリル
の3つです。これらには長さなどの要件が定められています。
マイナスドライバー
先端の幅が0.5cm以上、長さが15cm以上あるマイナスドライバーは、指定侵入工具と見なされます。
マイナスドライバーを鍵穴に入れて無理やり回したり、窓ガラスを割ったりすることができるからです。
バール
作用する部分(先端)のいずれかの幅が2cm以上、長さが24cm以上のバールは指定侵入工具の対象です。
バールで扉を破壊したり、窓ガラスを割ったり、シャッターを無理やり開けたりできるなど色々な犯行に使われます。
ドリル
電動・手動関係なく、直径1cm以上の刃が附属するものは指定侵入工具の対象です。
本体と刃が外れた状態で隠し持っていたとしても、検挙の対象となります。
ドリルは、「ホールソーのシリンダー用の軸」や刃を使った破壊解錠、サムターン回しのための穴開け用として使われる道具です。
ピッキング防止法に当てはまらない条件
正当な理由があれば、検挙されることはありません。その正当な理由とはどのようなものなのでしょうか。
基本的に業務に関係あれば特殊開錠用具や指定侵入工具を持つことができます。
鍵屋さんがピッキング用具を持つことは犯罪になりませんし、大工さんがドライバーやバールを持つことも犯罪にはなりません。
業務以外での正当な理由は、
- ・購入した品を持ち帰るところである
・友だちにDIY用に工具を使いたいと言われたので渡しに行く
などが当てはまります。
指定解錠工具を正しく使う場合や、自宅で使う場合は正当な理由と見なされることが多いです。
ただ、特殊開錠用具を業務以外で所持する正当な理由はほとんどありませんので、持たないのが賢明だと思います。
大阪府では独自の条例がある
大阪府では2002年に「大阪府安全なまちづくり条例」が施行され、全国に先駆けてピッキングに対する規制を設けました。
この条例では、ピッキング用具を譲渡の禁止の他、ピッキングの技術を教えることも禁止されています。
そのため、弊社の運営する鍵の学校大阪校でも、ピッキングの技術を教えていません。
ピッキングや空き巣対策はしっかりと
いくら法律があるといえども、犯罪は起こってしまいます。なので、被害に遭わないためにも日ごろから防犯対策はしっかりと行いましょう。
簡単にできるピッキング対策は防犯性の高い鍵に交換することです。
耐ピッキングや破壊解錠に優れた鍵に交換することで、ピッキングを防ぐことができます。鍵はCPマークの付いたディンプルキーがおすすめです。
他にも窓ガラスが割られないように対策をしたり、補助鍵を付けたりしましょう。
空き巣対策はこちらで詳しく解説していますので、参考にしてください。